ここんとこ毎日夢を見てはうなされる。
夢の中の悪魔は、微笑んだり、時に困った顔したりして
夢の中の俺は無条件で喜んでるんだ。
起きてスグに後悔する。悪魔の笑顔に悩まされる。
自覚したくは無いこの気持ちに、夢があまりにストレートに物言いしてくるから。
趣味の睡眠に障害がおきた―――。
「流川が寝てないなんてめずらしくね?」
「夜寝すぎたんじゃね?」
いつもなら“趣味”の時間である授業時間内も、夢に悪魔が出るから眠れない。
窓側の席は、ぽかぽかと日が差してきて、眠りを誘う。いつもは睡魔となんか闘わないのだが、そういうわけにはいかない。
ぽかぽかした日差しと、心地よい教師の子守唄、初めて戦う睡魔は想像以上に強敵だった。
頭がクラクラする。瞼が重い。でも、負けるわけにいかない。
夢の中の悪魔は、まだ笑っているだけだけど、次は一緒に手を繋いでいたらどうする。抱き合っていたら?いや、それ以上のことだってあり得るかもしれない。
そんなこと、させねえっ―――。
「確かに寝てはいないけど…」
「ま、授業聞いてるわけじゃなさそうだな」
眠くて、余りに頭がぼーっとするので、なんとか頭を冷やそうと教室から外へ出た。
ぽかぽか日差しと教師の子守唄が無いことは大分体に優しいようで、眠気は恐ろしいくらいすぐに薄れてく。
でも、睡魔と闘わないで良い代わりに、今度こそ本当の敵が目の前に現れることになった。
夢の中の悪魔は、こっちの世界では勿論人間の姿をしていて、そいつは小さくて、弱そうで、
だからこそ、こんなのに悩まされているなんて馬鹿らしくなってくる。
「あ、…おはよう流川くん」
こんなの、ちょっと捻れば簡単に勝てそうなのに。
「……うす」
それが出来ない。
「…えと、じゃあ、またね」
同級生同士の普通の会話をして、そいつは去ろうとする。
それもまた、悪魔の攻撃。
俺だけの特別を、いつだって願っているのに。
「おい」
去り際に掴んだ腕は、本当に細くて、ほんとにちょっと捻れば折れそうだから、優しく扱わねえと、と思った。
勝てないんじゃない、勝つ気がないんだ。
勝ちたいんじゃない、特別になりたいだけ。
「どうしてくれんだ」
「…えっと……?」
悪魔は現実では何も知らない振りをする。自分が悪魔だっていう自覚がないから性質が悪い。
「お前のせいで眠れない」
でも、正直なところ、こいつが悪魔であろうと天使であろうとどっちだっていい。
俺の特別なら、なんだっていい。
「お前が夢に出てくるせいで眠れない」
攻撃が効いたのか何なのか、悪魔は顔を赤くして俯いた。
「はあ…、だから、藤井ちゃんも流川も、早くお互い好きっていえばいいのに」
実は最初から傍にいた“マツイサン”という悪魔の友達が呟いた。
悪魔と俺は固まって、
ああ、大ボスはこっちだったと今更気付いた。