なんで、この人はこんな怖い目で私をみるんだろう。
「えと、だから、何でもいいよ…?」
身をすり切らして出した小さな言葉にも目の前の大きい人は、はあ、とため息をつくだけで。
ふせた瞳からするりとのびる睫が、余りに長くて、綺麗で、
やはり見とれてしまった。
「“何でもいい”じゃわかんねえ」
困ってるのか、それとも怒ってるのか、判らなくて
私はとにかく、これ以上この場の空気を悪くすることのない様、黙っていた。
「何か、ねーのか。できることなら、なんでもする」
何でもする、なんて、そんな言葉、言われ慣れてないから
“なんでも”って言葉に照れてしまった自分が恥ずかしい。
「流川くんのくれるものなら、何でも嬉しいよ」
はあ、と、また大きく息をつくのが判った。
空気は変わらず、ピリピリしたまま。
だって、ほんとに何でも良いんだもの。
こうして私の誕生日を、貴方が祝おうとしてくれることが
もう飛び上がるくらい奇跡的なことなんだから。
「“何でも”…って。何でもだぞ?」
「何でも、だよ」
日本語になってない言葉の掛け合いをして、
「こーかい、すんなよ」
無茶苦茶にしてやる、って本気の顔で言うもんだから
「プレゼントにはリボンをかけてね」
そう言ったら、困った顔で、また少し睨まれた。

それが、朝のホームルーム前のことで、
放課後また再会するときには、彼が何処にリボンをつけてやってくるのか
想像して笑いながら、
後悔しちゃうくらいのプレゼントに期待してどきどきしながら、
幸せな一日ははじまっていった。

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