何度やっても、恋ってもんは懲りないもので
「髪、伸びてきたね」
恋愛はじめて50回以上、ようやく結ばれて2週間。
「私、やっぱりそっちの方が好きだな」
あー。
こんなんで、また髪伸ばしちまおう、なんて思ってる俺
「あ、でもボーズが嫌いってわけじゃないんだよ!」
男前、失格。
「あの時は気持ち入ってます、って感じで素敵だったな」
実は彼女は思ったより喋る子で
「あ、ごめん…何か、えらそうだね」
でも、やっぱり、ちょっと謙虚で。
「桜木くんなら、何でも似合うとおもうよ」
なんか適当じゃねーか?
彼女、喋りはあんま上手くないんだよな。
「あ…ごめん。なんか、あたしばっかり」
そして、よく謝るんだ。
「良いっすよ」
「何か、今日、大人しいね?」
それは、貴方といるからです、なんて。
「あたしも、髪のばしてみようかな…小さい頃から、ずっと短いんだ」
彼女の声が、上手く俺のドキドキを隠す。
「どう、かな?」
そうでもないと、自分の鼓動を隠そうと俺、どんなことしちまうかわかんねえ。
「何でも似合うとおもうけど」
藤井さんなら。
「なんか、適当じゃない?」
あ、これじゃさっきの彼女と同じだ。
いや、でも、本心なんスよ。マジで。
「長くても、短くても」

「藤井さんなら、何でも良いよ」
「……」
やべえ、黙っちゃった。しんぞーの音、聞こえちまうかも。
何度やっても、恋ってやつは、ほんと懲りねえ困り者で、
それは、彼女といる限り。

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