「青春って、あーいうことを言うんだね」
素直に、そう思ったの。
「何スカ。突然」
体育館で誰よりも汗を流してる貴方を見て
「輝いてるなー、って思って」
「………」
「あっ!いや、えっと…その!」
やばい、ふたり揃って顔真っ赤。
「ご、ごめん…へ変なこと言っちゃって…」
でも、本当に、そう思ったの。
早すぎる受験勉強に苦しんでる自分と比べちゃって。
「せ、青春だね」
「………」
まだ一言も話さない。
普段豪快なくせに、こゆとこ小さいんだから。

そんなとこが、好きなんだけど。
「………」
もうそろそろ、顔あげても良いと思うんだけどな。
てゆか、言っちゃった私の方が恥ずかしいし。
「なんか、うらやましくて。あたしなんか授業と塾の往復で、“青春”なんて程遠い感じだし」
あ、何かあたし、ごまかそうとして、おしゃべりになってる。
「青春、スか…」
やっと喋った。
「藤井さんも、出来るんじゃないスか?」
「え?」
「セイシュン、てえの」


はじめて触れた彼の左手が、あんまり大きくて、分厚くて、
見たことも無い生物に触れた気がして、驚いて
「不満…スか?」
目いっぱい首を横に振ると、
それから、強く、強く右手が彼の左手に包まれて
やっぱり顔は赤いまま、帰り道の、

同じくらい赤い夕焼けに二人は溶けていった、っていう話。

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