「どう、しよっか?」
沈黙をやぶったのは私。
約2週間前、予想もつかない相手から告白されて以来、彼とちゃんと会うのははじめて。
市外の高校との練習試合。
特に私は行く必要は無かったんだけど、日曜だし、マネージャーをしてる親友が誘うし、
何より、彼、がいるし。
今日の試合も、やっぱり彼は格好良くて、黄色い歓声を全て集めてた。
その、帰り道。
皆、バスで帰ってったのに、彼だけ残る、って言って、2人きり。
私も帰ればよかったんだけど。
「キスしてえ」
2週間前の告白は、保留したまま。
「試合後はコーフンしてる」
彼は冷静に自分を分析する。
「無理、だよ…」
嫌いなわけじゃないし、むしろ本当に格好良いと思う。
親友の元、想い人だ、ってのも多少は影響しているのだろうけれど、それとも違う。
「んなこと言われたら、余計興奮する」
きっと、怖いのだ。
どこまでも伸びるような大きな体も、手も、足も、
それに似合わぬ美しすぎる顔も
「顔、赤い」
この声も。
「赤く…ないよ」
大きな手が口にのびてきて、少しだけ、触れる。
まつげとまつげが絡み合う程近い、顔。
少しだけ荒くなった息が、鼻にかかる。
「ゴ、ゴーカン罪だよ?バスケできなくなるよ?」
怖いのだ。
彼に全てを食べられてしまいそうで。
体ごと、心ごと、全部彼だけにされちゃいそうで。
元々の私の部分なんて、まったくなかったかのようにされちゃいそうで。
「それは、困る」
「ほら、ね?だから…
「早くお前が俺のこと好きって言えばいーんだ」
いえないよ。
それは、悪魔の呪文。
言ったが最後、私は堕ちていくばかり。
「す」
唇で唇を無理矢理開かされる。
「き」
美しすぎる悪魔が私を陥れようとしてる。
もう既に、私は貴方に夢中。