いつまでも、雨は降り止まないのだ。いつまでも。
それでも、貴方は傘をささないのだ。
“傘は嫌いだから”などという、感情的な理由で。
「ツツミさん」
「貴方は、何故、生きているのですか?」
最早、守るものどころか、奪うものすら無いというのに。
「死なない、からだろ。誰も俺なんかの命を奪いに来ないし、自分で命を絶ちてえって思うほど
肝も据わってねーしな」
私は、大雨の下でなら傘をさす。
雨には濡れたくないからだ。
「じゃあ」
「いつか、この戦いの全てが終わって、
それでも貴方が生きていたら」
「私が貴方を殺しに来ます」
ツツミさん
水もしたたる良い男、なんて言葉はあっても、
それは貴方には当て嵌まらないようです。
「やーだよ」
雨に濡れる貴方は、酷く、不細工です。
「じゃあ」
ツツミさん
「貴方がいつか、命を絶つその日まで、
私を傍に、置いて下さい」
貴方が雨の日に傘をささないのは
“嫌いだから”なんて理由じゃなく、
誰かに傘を差し出されるのを待ってるからじゃないですか
「考えといてやる」
いつかは矢張り、雨はやむんです。
貴方の嫌いな傘を、ささなくていいんです。いつかは。
それでも
2人で傘に入ることは、雨が降ろうと振るまいと
やってもいいって知ってますか?