「おはよう」
二度寝が好きな少女だった。
一度目から二度目への眠りに落ちる瞬間がすき、と、いつか語ってくれた。
だから、いつも寝坊ばかりしていた。
未だ横たわったままの少女のかたわらにあるカーテンを開けて、朝日を迷い入れる。
ジリリリリリ・・・・・
彼女が仕掛けた3個目の目覚まし時計が部屋一杯に声をあげる。
彼女のそばに腰掛けて、わたしはゆっくりコーヒーをすすった。
いったい何個目の目覚まし時計で目が覚めるのか
それを見つめるのが、毎日の習慣。
まるで呪いをかけられた眠り姫の様に眠っているので
ならば、と
口付けしようと考えたが、
もし、それで彼女の目が覚めてしまったら
起きた彼女に何と言われるか判らないから、試みはしないことにする。
ジリリリリリリ・・・・・・
リリリリ・・・・・
リリ・・・・
・・・・
本日3個目の目覚まし時計も、役目を果たせず泣き止んだ。
これで通産4582個目の音も、彼女を目覚めさせることは無かった。
「それでは、私は仕事の時間だ」
さらりと撫でた頬は、いつもの如くあたたかい。
どんな夢を見ているのだろう。
一度目から二度目への眠りへうつる、好きな瞬間を味わずに、
一度目の眠りに没頭し続けて。
さぞかし楽しい夢なんだろう
起きたら、語ってくれないか。