こんなこと、ほんとは死んでもいいたくない。
きっと死んだほうがましだ。
でも言わなくちゃしょうがない。

“あんたがいないと駄目だ”

 

誰かに依存する、なんて一番嫌うやり方。
恋愛で自分の毎日がぐちゃぐちゃになるのが一番嫌。
一人で笑って、一人で立っていたいのに。

あたしの中のあんたは、足元から始まって、もう喉元まで埋まってきてる。
あたしが、あんたでいっぱいになってしまう。
“あんたさえ手に入れば”“他になにもいらない”
って、喉がこんなにも言いたがって、破裂しそう。

そんなはずない、そんなはずない。
欲しいものなんて山ほどある。夢だってある。
あたしの足元から広がる未来は無限で、輝かしいはず。

 

なのに
ほんの少しだけ躓いたとき、霞む瞼に現れるのは長い髪の白い男。
喉が“欲しい、欲しい”って、渇望する男。
「無理するな」
なんて、言われて伸びた手に、
あたしはくらくらしてしまう。
この手に触れれば、きっとあたしが奪われる。
“あんた以外の何も、いらない。あんたが傍にいれば良い。”
そう言って、
あたしの中のあんたは喉も顔もこえて、全てを満たして。
きっとあたしは窒息する。

きっと死んだほうがまし。
でも、あたしには夢もあるし欲しい物だってある。
足元から広がる未来は、無限のはず。
だから神様、
代わりにこいつを殺してください。
あたしの前から、消してください。
この人さえいなくなれば、それ以外の欲しいものは、きっと全部手に入る気がするから。

 

だから
「無理じゃねえよ」と
差し出された手を強くはらった。

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