だって、はじめてだったんだもん。
2人きりでお出かけ、なんて
所詮それが備品の買い出しだったとしても。
「若菜」
マネージャーなんて普段、何のおしゃれも出来ないから。こんなときくらい。
「変わったにおいがするな」
「か、変わった?」
このにおい、好きじゃないのかな。
「どうしてだ?」
「こ、香水です。変、ですか?」
「香水?」
立ち止まるから何だと思ったら、彼がゆっくり頭を近づけて来た。
嫌じゃない程度の汗のかおりがする。
このにおいに、いつだって安心するのだ。
「?……ええ!?」
綺麗な形の鼻が、私のおでこにある、って見なくても感じられて
(というか、こんな至近距離でなんて見れないよ)
「…悪くない」
ああ、なるほど…香りの確認をしていたわけなんですね…。
きっと何気ない行為なんだ、って判っていても、胸のどきどきはとまらなかった。
あなたは気付かないだろうけれど、確認なんてしなくても
私の胸の中は貴方の香りでいっぱい、って知っているから。